後妻業ー罪悪感も危機感もない事の怖さー
映画が公開されて久しいですが、観たいと思いながら観逃してしまった『後妻業の女』
ある方のブログから、原作が黒川博行氏の『後妻業』であることを今更知って、早速購入したしだいです。
この作品も一気に読めてしまいました。
少し前に関西のおばちゃん(年齢的にはおばあちゃんに近いかも)の[夫殺し]がクローズアップされて、連日ワイドショーを賑わしていました。
毎日、その疑いをかけられた老女はテレビに出てきて、自分の無実を当たり前のように主張していました。
ただ、夫が不審死を遂げたのは初めてではなく、老女は結婚死別をくりかえしており、その度に資産を相続していたと言う。
そのお金で身奇麗にし、遊び暮らしていたようです。
老女の手口がいつも巧妙で、結婚したら(籍を入れないで内縁の妻だったこともある)自分が資産を相続出来るように、必ず[公正証書]を作成していたとのこと。
道徳的にはどうであれ、法的には何も咎められない対策をしていたという狡猾さ。
いまだに、あの老女の顔が目に浮かぶ程のインパクトの強い事件でした。
もちろん、小説はフィクションですが、もうバリバリにあの老女と重なってしまい、面白いやらこわいやら。
作品中では、この「後妻業」という『なりわい』を斡旋する結婚相談所がでてきます。
殺人はしないまでも、こう言った詐欺まがいの行為は実在するのでしょうね。
黒川博行氏独特の、あの関西(大阪)臭。
なんともダーティでディープな大阪の世界。
私は大阪出身なので、土地勘もあり、映画を観なくても充分にイメージが湧いてきました。
そんな私の中で、『破門』を初めて読んで以来、勝手に黒川博行氏の作品に出てくる登場人物をイメージしています。
今作の結婚相談所所長は『トヨエツ』こそが、映画公開前から私のイメージにピッタリの俳優でした。
と、言うより、私の脳内では毎作品、『トヨエツ』なのです。
関西弁の上手さ、スタイルの良さ、顔の鋭さ、頭がキレそうな雰囲気。
ちょっと色男。
そんなトヨエツ演じる結婚相談所所長、後妻業を斡旋し、殺人にも加担している同じ穴のムジナにも関わらず、件の老女(小夜子)のことを、『罪悪感も無ければ危機感も無い』事にちょっとした恐れを抱いています。
そこがまさに、人としての『分岐点』なのてはないか、と、感じた私でした。
DVDでも観ようっと。